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運転士の「親心」

何とも、考えさせられるニュースだと思う。

埼玉県の東武野田線で、3歳の長男を運転室に入れたまま電車を運行したとして、30代の運転士を懲戒解雇するとした東武鉄道に対し、電話やメール等で「処分が重すぎる」などとする意見が、11日までに1500件近く寄せられたそうだ。しかし東武鉄道は「入念な社内調査に基づいた処分」として、懲戒解雇の方針は変えないということだ。

この事件は、東武野田線を運転する運転士が、乗務後に家族で食事をするつもりで、乗務する列車に運転士の妻と長男(3)、長女(2)が乗っていたが、途中から長男が運転室の扉をたたき始めたため、運転士が長男を注意しようと、南桜井駅で停車中に運転室の扉を開けたところ、長男が入りこんでしまい、しゃがで泣き始めてしまった。その状況のまま発車時間になってしまったため、運転士は仕方なく運転席に座り、そのまま運転した後、隣の川間駅で長男を妻に引き渡した、という事件だ。

事件当時は20名ほどの乗客が乗っていたが、この一部始終を見ていた乗客のひとりが東武鉄道に通報して事件が発覚したとのことだ。まぁ「この乗客が会社にチクらなければ」見過ごされていた出来事だったのかも知れない。しかし泣き止まない自分の子供を運転室に入れたまま運転したこの運転士に、会社から「懲戒解雇」という、重い処分が下されるとは、運転手本人にとってはなんともやり切れないだろう。

この運転手としては、「自分の子供が扉をドンドン叩いたら他の乗客に迷惑がかかる」という一種の「親心」で乗務員室の扉を開けてしまったのかも知れない。そしてまさか子供が入り込んで泣き続けるとも思っていなかったのかも知れない。そしてこの状況では機器に触られることも無いという確信があって、ひと駅だけ運転したのかも知れない。しかし結果的には「第三者が運転室に入っている」ことになり、規則にて処分されてしまったのだろう。

東武鉄道としても、竹ノ塚踏切事故のこともあり、乗客の命を預かる運転士の立場で起こしたこの事件について、甘い処分にすると批判されることを恐れたのかも知れない。確かに3歳児はまだ物事の分別がつかないところもあり、重要な機器に間違って触る恐れも無いとは言えない。その可能性が全く無いと言い切れないので、厳しい処分も仕方ないのかも知れない。会社としては、何も無かったから良かったものの、もし誤作動させて事故にでも繋がったら、それこそ責められるだろう。

私が過去に乗ったとある私鉄で、車掌が小さい子供を車掌室に入れて窓から風景を見せていたのを何度か見たことがある。その時は非常に微笑ましかったのだが、もしかしたらこれもいけないのだろうか。この私鉄は東武鉄道ではなく、また会社によって規則が違うのかも知れないが、私個人的には「結果的に何も起こらなかったから、懲戒『解雇』にまでする必要は無いのでは」と思った。

やはり言わば無意識にせよ原因を作った長男が、将来大きくなった時に「自分が原因で父は解雇された」と知ると、ショックを受けるのではないかと思う。解雇にしなくても例えば「運転士の資格を取り消す」とか「一定期間謹慎にする」とか、本人に反省させる手段はいくらでもあると思う。懲戒解雇では、再就職も難しいと思う。私は運転士でも何でもないので良くわからないが、運転士のまま転職できることは、まず不可能ではないかと思う。

当然「規則」は守るものであり、それを破った者には厳格に対処する必要もあると思う。しかし決して「世間体」だけで社員を処分してはいけないだろうし、この運転士も悪意を持って行ったわけではない(過失な部分もある)と思うので、情状酌量(?)の余地は残しておいても良いのでは、とも思う。鉄道関係の方からすると、当たり前の処分なのかも知れないが、一般の(?)社会人である私にとしては、なんとも可哀相に思えるのである。

・・・私も「規則」には十分気をつけようと思った、今回の事件である。

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